Q.蒲生徳明 議員(公明)
知事が掲げる二つの歴史的課題、人口減少・超少子高齢社会への対応、激甚化・頻発化する自然災害、パンデミックなどへの危機対応は、いずれも従来の縦割り行政のままでは対応が困難と考えます。
例えば、人口減少・超少子高齢社会への対応は、若い世代が安心して子供を産み育てられる環境づくりには、保育所の整備、待機児童の解消に併せて、安心して働ける環境や子育て世代向けの住宅政策など、多岐にわたる分野で組織の壁を越えて連携し、一つの目標に向かい様々な政策を実現、推進していく必要があります。困難な課題の克服には県組織の横断的な取組を強化し、関係機関も含め幅広く横の連携体制を構築し、一体となった取組が必要と考えます。
私は、県議会議員としての初質問で縦割り行政の弊害を指摘し、部局横断型の予算編成の必要性について質問しました。当時の上田知事は、「県民の視点に立った県政を実現するには、部局の縦割りによる対応は大きな限界があり、全く同感であります」として、「県民生活者の視点に立ち関係部局が横断的に取り組むべき課題として検討し、テーマごとにプロジェクトチームを立ち上げ、効果的な施策の在り方、県民、NPOの協働による実施の在り方等について検討させるなど、部局横断型な議論を早期に開始し、その成果を来年度予算に生かしていきたい」と答弁されました。
そして、翌年度予算の説明書には、幾つかの事業項目の頭に部局連携の表示がありました。その後、一定の成果があったことは認識しております。ただし、これまで本県の部局連携の在り方を拝見しても、実際に部局を超えて政策づくりを実行する困難さは、現場で対応する職員の皆様の忌憚のない意見としても聞いております。
ただし、大野知事もおっしゃるとおり、この壁を乗り越えなければ県政の更なる進展はなく、近年、移住も活発で住民が住みたい自治体を自ら選ぶこの時代、本当の意味で誰もが住みやすく、いや、住みたいと思う埼玉県は実現できないと思います。そこで、県政が大きく脱皮し発展するためにも、とかく縦割りに陥りがちな行政組織について、具体的にどのような体制で対応していくのかを知事に伺います。
そして、激甚化・頻発化する自然災害は、近年、頻発する豪雨による河川の氾濫、大雪による農作物の被害など県民生活に深刻な影響を与えています。さらに、自然災害とは異なりますが、先般、発生した八潮市の道路陥没事故では、道路や下水道、生活インフラに甚大な影響を及ぼすなど、これまで経験したことのない大規模災害がいつ、どこで発生してもおかしくない状況です。
今後、県民の安心・安全を守るためには重点的な職員の配置も必要と考えますが、知事の所見を伺います。
また、知事は、生産年齢人口が減少しても労働生産性を向上させ経済成長を持続的なものにするため、DX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れております。DXは一朝一夕には実現できず、また、県庁一丸となって取り組む必要もあり、知事は全ての職員がワンチームで取り組めるようDXを三つのステップに分け、段階的に進めることを提案されました。
知事の率先した取組でペーパーレス化が徹底され、第1段階、アナログからデジタルの転換はほぼ完了、現在は第2ステップで、デジタルで仕事のやり方を変えるデジタライゼーションに移行し、中でもデジタルでタスクを効率化するタスクトランスフォーメーション(TX)を推進しておられます。そして、その先には第3ステップがあり、デジタルを前提に仕事や県庁の在り方を根本から変革し、新しい価値やサービスを提供する真のトランスフォーメーションを見据えていると伺っています。
知事は「DXの三つの段階を乗り越えるには、全ての県職員がDXを自分ごととして取り組むことが重要である」と発言していますが、それには職員の意識改革が不可欠と思います。そこで、DXを自分ごととして取り組めるよう、職員一人一人の意識改革には何が鍵であると捉え取り組むのかを知事に伺います。
A.大野元裕 知事
人口減少・超少子高齢社会への対応に向けては、医療、福祉、交通など様々な行政分野が密接に絡み合うため、部局横断的対応をはじめ、市町村や関係機関も含めた連携体制による推進が必要です。
こうした、時代の変革に対応する重点施策については、テーマごとに2つのプロジェクト手法を適切に使い分け、縦割りの超克に努めます。
一つ目は、テーマが幅広で、中期的な期間を見込むプラットフォーム型プロジェクトです。
例えば、埼玉版スーパー・シティプロジェクトでは、私をトップとする庁内推進会議を設けるとともに、関係課で構成する事業化支援チームを編成するなど、市町村のまちづくりを支援することで、エントリーが56団体に拡大し、着実に成果が出ております。
もうひとつは、短期間で明確な達成目標と対象範囲を設定できるPMBOK型プロジェクトの手法です。
例えば、こどもの居場所プロジェクトでは、約3か月間で、こども応援ネットワーク埼玉の会員企業数の拡大を目標に取り組んだ結果、関係部局との連携により期間内で目標を達成するとともに、JAグループさいたまから米1トンの寄付を頂くなど、新たな支援の輪の広がりも見せています。
さらに、プロジェクトに費やす時間を捻出すべく、TXの取組を進めており、一定の成果を挙げるとともに、自らの所管ではないとの意識払しょくに努めます。
今後とも、こうしたプロジェクトを効果的に活用し、ワンチームで取り組んでまいります。
次に、県民の安心・安全を守るための重点的な職員配置であります。
激甚化・頻発化する自然災害やパンデミック対応は、有事の臨機応変な対応と平時の備えが何より重要だと思います。
まず、自然災害や感染症など有事への対応としては、これまでも県民の生命、身体、財産を守るため、庁内の力を結集し応援体制を執ると同時に、職員定数の増員を図ってまいりました。
過去には、令和2年度に、台風災害への対応で12人、豚熱対応で10人、令和3年度、4年度には、新型コロナ対策として106人を増員するなど、状況に応じて柔軟に定数を措置しました。
また、八潮市内で発生した道路陥没事故については、事故発生当時から全庁での応援体制を敷いていますが、今後下水道管の復旧工事や再発防止対策等を推進すべく、令和7年4月1日付け組織・定数改正において、 10人を増員し体制の強化を図りたいと思います。
他方、激甚化・頻発化する自然災害や新たな危機への備えとして、防災DX政策幹の新設や埼玉版FEMAにおける関係機関との連携強化など14人を増員し、体制を更に強化するところであります。
有事の際には、県庁内のみならず全てのステークホルダーが参画する埼玉版FEMAを推進しておりますが、そこにおいては、プライマリーあるいはセカンダリー等の役割を部局ごとに与え、全庁体制で重点的に取り組む体制を作り上げています。
今後も有事の臨機応変な対応を図るとともに、平時の備えとして、災害など危機対応の強化が必要な部門に職員を重点的に配置するなど、ワンチームで県民の安心・安全を守ってまいります。
次に、DXを自分事として取り組めるよう、職員一人一人の意識を改革するには何がカギととらえ、取り組むのかについてであります。
職員1人1人が自分事としてDXに取り組むカギは、DXを他人任せにする依存心をなくすこと、そして誰もがDXに参加できる環境をつくることだと思います。
多くの組織では優秀な外部専門家を登用しても、DX化はこれらの専門家の責務ととらえて、他人事になる傾向があり、結果としてDXが推進されない例があります。
このため、私は、本県のDXは外部から招いた専門家ではなく職員が主役となって進める方針を明示し、職員誰もが参加しやすいようDXを3つのステップに分けて段階的に進めることといたしました。
さらに、DXについて開かれた議論の場をつくり、職員全員がツールを使い、優れた事例を共有できるようにするとともに、ネットやツールを使用できる環境を整備しました。
まずは、DXについて自由に議論し、情報共有ができる場として、全部局の中堅・若手職員が参加できるプロジェクトチームを立ち上げました。
プロジェクトには現在289課所892人が参加し、ときには私や副知事も議論に参加しながら活発な意見交換を行っています。
次に、DXを誰でも使いこなせるよう、地域機関を含めた庁内のネット環境や、PC等の環境を整備し、ノーコードツール、生成AI、文字起こしAIを全ての職員が利用できるようにしました。
また、DXのモデルとなる身近な事例を共有すべく、各部局の優れた取組を表彰し、成功事例を横展開できるコンテストを開催しました。
さらに、ITスキルの習得など、スキルアップに取り組む職員を支援する新たな事業を令和7年度予算案に計上させていただきました。
今後も、DXについて職員が自ら考え、互いに切磋琢磨し合える環境を大切にし、DXを推進してまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。